[0004] ぼーいみーつがーるそのにのに:盗賊団登場!【KanonSS:ろーかの】 (2002/06/14)
ろーかの。2 「ぼーいみーつがーるそのにのに:盗賊団登場!」 で。 「探検中止! 自宅待機!」 ……空は高く、青く、太陽が照っているのだが。 …………尋常じゃなく寒かった。 「あら祐一さん」 「は、はは……」 ゆらゆらと身体を揺らしながらドアの外へ出て、閉める。 昨日もそうであったように、このマントは寒さよけには弱い。 (寒いので中止です、てなわけにはいかないよなぁ〜) 若者なりに妙なプライドがあるのだ。美人の叔母に弱みはそれなりに見せたくないという(笑) 「……行くしかないか」 (やっぱ寒い…) ◆ 大きい道でかつ人のいる方へと歩いて行ったのが幸いしたのか、昼過ぎには商店街の様な所へ出た。 風系の呪文でも使えば早いだろうが、最初ぐらいは目立つ行動は避けたい。 (小さい街だな) ここが買い物の中心になるのであろう。 それなりには大きい規模だが、他に全く店が見あたらない所をみると、町の中にはここにしか店がないのだろう。 学校が終わったのだろうか、名雪の様な服を着た少女達や男子の制服、老若男女とそれなりに人が多い。 (しかも旅のルート上でもないから、俺みたいな旅人風もいないってか) さりげなくだが、やはり興味があるのだろう、行き交う人の視線が痛かったりする。 (…ま、緩んでる証拠かもしれないが…そういうのじゃなさそうだな) 何故か気を緩めたりするとそういう稼業じゃない方々からも見られたりするのだが。 また特に妙齢の女性が恐い目で見ている気がする。 昔、親爺にこの事を言ったら『自意識過剰なんだよエロ餓鬼』とか言われてそれ以来気にないようにしているんだが。 …見ると縁起がよかったり、奇妙な顔でもしているんだろうか。 あんまり人間に関わってこなかったし、基本的に人間がどうなろうと知ったことじゃないからなぁ。 …、でもちょっといやだぞ、こういう視線は。 目的の場所に行きたいが、聞けるそれなりの人間が見あたらない。 …怖い目でみつめてくる人達には声は掛けたくないし。 (やっぱり覚えがないな…たぶん名雪と来たはずなんだろうけど…) 通りの先をぼんやりと見る。 「そこのひとぉ〜!」 前方から何かが飛び出してくる。 どんなものでも避けられるはずの自分なのだが、足が固まって動けない。 (どこかで見た…いや、あったはずだ) 「どいてどいてどいてぇ〜!!」 「え、あ、あ」 飛び込む身体。目の前には薄茶色の髪。 温かさと懐かしさ。感情の沸く思い出の欠片。 何故か避けられなかった。 それでも祐一は転ばず、ぶつかってきた少女が尻餅をついた。 顔は祐一のメイルに直撃だったのだろう、鼻をさすっている。 「うぐぅ〜いたいよぉ〜」 「何なんだ?」 痛くはないが、勝手にぶつかって被害者面する人間に甘くはない。 「ひどいよ、どいてっていったのにぃ〜」 「はぁ……大丈夫かぁ?」 手を差し伸べ、少女を起こす。 (え…?) 浮かぶ感情。 当惑する祐一に構わず、少女は後ろを振り返る。 「わ! と、とりあえずはなしはあと!走って!」 「え」 とんでもない力で少女は祐一を引っ張り走っていく。 これが『火事場の馬鹿力』ってやつなんだろうなぁ、とか引きずられながら祐一は思った。 「何なのか解らんがとりあえず、待て、落ち着くんだ」 「待てないよう〜〜〜っ」 商店街の裏道の物陰でようやく少女が止まった。 というより限界だったのだろう、息も絶え絶えだ。 祐一はといえば、全く息を切らしていない。 「一体どういう事なんだ?」 「…追われてるんだよ」 ボソリと低い声音で呟くが可愛いだけで恐怖感が全くない。 「誰に」 追われてるというのは穏やかな話ではない。 「これ以上はボクの口からは言えないよ。関係ない人を巻き込みたくないからね」 「すっかり巻きこんどるだろが!」 「あ!来た!」 ぐいっと祐一の腕をとり影に隠れる。 少し待つと追っ手らしき人物が現れた。 薄汚れた白い帽子にエプロン。息を切らせている太めの親爺。 どうみてもただの人の良い親爺だ。 「……(呆れモード)…あれか?追っ手は」 「そうだよ」 「俺には善人が滲み出ているような飲食店関係者に見えるが」 「人は見かけ通りとは限らないよ」 やがて諦めた親爺はしょんぼりしながら元の道を戻っていった。 「うぐぅ〜怖かったぁ」 「結局何なんだよあの親爺は何屋だ?」 「たい焼き屋のおじさんだよ、ほら」 少女が胸に抱えた袋から湯気をあげているたい焼きを取り出す。 「歩いてたら美味しそうな匂いがして、そこがたい焼き屋さんで」 「ああ」 …すでに戦闘モードは解除された。眠ってもいいぐらい下らない予感がする。 ひしひしと。 「買って受け取ったはいいもののお財布がなくて……それで…仕方なく規則に従ったんだよ」 「………規則?」 「話せば長くなるんだけど」 「ああ」 「すごーく込み入った複雑な話なんだけど…」 「時間はあるから言え」 ……もうそろそろ夕暮れだから目的地に行ってたら夕飯に間に合わないし。 「ぢつは…『手に入れた獲物は何としても手に入れる!』って規則に従ったんだよぅ〜!」 「ただの食い逃げ泥じゃねーか!」 「違うよ!『全国たい焼き窃盗団』の団長だもん!」 「自白してんじゃねーか」 「う、うぐぅ……でもだって食い逃げじゃないもん、規律正しい窃盗団だもん」 ブツブツいっている少女の首根っこを掴む。 「さて、窃盗団の団長の賞金を貰いに行くとするかぁ。シケた額だろうが、夕飯代ぐらいにはなるだろうし」 「う、うぐぅ……初犯で解散なんて……う、うぐぅぅう〜」 「初犯?」 「初めてで失敗するなんてぇ……うぐう〜」 首根っこを掴んだまま頭をポンポンと撫でる。 そこで少女が初めて視線を祐一に向ける。 優しい、瞳。 どこかで見たような。 (まさか、ね) 「仕方ねーなぁ…もうやるなよ?」 「う、うぐぅ……」 そのままポンポンと少女の頭を撫でる。 かなり気持ちがいいのだろう、犬耳があったら垂れてヘロヘロな感じな顔になっている。 「んで団長、名前は?」 「あゆ…あゆ」 「あゆあゆ?」 ((今のやり取りどこかで………)) 「ちがうもん!…あゆ!……月宮あゆだよっ!」 「はいはい、いいお返事でした。俺は、祐一。ここへは以前来た事あるらしいんだが、暫く親戚の家にやっかいになることになってな」 「え!ゆういち…くん?」 「ん? そうだ。祐一様だ」 「嘘……」 「嘘じゃない、祐一様だ」 「な、7年前もこの街に来てた?」 「あ、ああ」 「ボクだよ祐一君。7年前ここで出会ったあゆだよ!」 「会った…? え、えーっと………」 欠片の様な記憶を探す。7年前の事は全然覚えてないはずなのに。 引き出されるように思い出す。 泣き顔の女の子。 「ぅぐぅ…また、会えるよね?」 「ああ」 「約束…」 「あゆ……あゆ、か? あのうぐうぐ言ってた」 「うぐぅ…」 「おお由緒正しい『うぐぅ』だ。やっぱりあゆだな!」 「ゆ、ゆーいちくぅん!やっぱり祐一君だよー!」 空気が揺れたのと本能が危険信号を発して右へ飛ぶ。 どが。 がらがっしゃん。 「うぐぅ〜〜〜」 あゆが街頭に正面から顔が突っ込んだらしい。 ちなみに、 加害者:あゆあゆ(軽傷:鼻が赤いぐらい) 被害物:街 灯(全壊:あゆ型に柱が歪んでいる) 「おお、気配読めなかったぞあゆ団長。結構やるじゃないか」 「うぐぅ〜祐一君が避けたぁ! 再会の熱い抱擁シーンだったのに避けたぁ〜!」 「や、痴女に襲われるかと思って。ちょっと貞操の危機を感じたもんでな」 「う、うぐぅ! ひどいよ祐一君〜」 幼児のあゆが半泣き半目で上目遣いで俺を睨む。 う゛。 ちょっと、いや、かなり可愛い。萌えなくもないが。 「ねぇ、あの子達何かしら」 「別れ話のもつれらしいわよ」 とか端で言ってるオバサン達の会話を良く聞こえてしまう耳でキャッチ。 まだ街にいる事になるだろうからこういう良くない噂は立たせないに限る。 「大丈夫か?あゆ」 ちょっと意識して真剣にあゆを立たせ、優しく言う。 そして小さく、 「あゆ、店に謝りに行こう。金は俺が出すからさ」 あゆ、キラキラ王子様祐一モードと『奢り』に敗北。 さりげなくしかし早足でその場を立ち去る事には成功。 「うまいか?」 「ふぐ、ひゅーひちふんは?」 「ああ、そうだな」 たい焼き屋からの帰り道。 見た目通りの良い親爺はニコニコしながら謝っているあゆを許していた。 過剰良人かロリコン系だな、と祐一は自分内会議で決定した。 浮かぶのはタイヤキを頬張る少年と少女。 自分とあゆであることは解るのだが、解るだけだ。 (話しておいた方がいいな) 「そろそろ帰らないとな。歩きながら話そう、ちょっと話したい事があるんだ」 「うぐ?」 自分の記憶の所々が欠いてしまっている事、 7年前の記憶が曖昧になっている事、などをあゆにかいつまんで話す。 小さく俯いているあゆの表情は祐一には解らない。 「悪いな、あゆ、そういう訳であんま覚えてないんだ」 「んーんひにひなひで…むぐむぐ(ううん、気にしないで)」 (でも…覚えてないって言ってたけど…変わってないよ、祐一君) 「お、やっと見知った道にでたな、それじゃな、あゆ」 「祐一君、またここに来る?」 「小さい街って事は店の類は全部ここなんだろ? じゃあ来るさ」 「また会えるかな?」 ちかり、と記憶が弾ける。 「……約束するか? 昔みたいに」 「……え?」 「ちょっと思い出しただけだぞっ」 行動に照れているのだろう、何気に赤い。 あゆの手をとり、小指を絡めさせる。 あゆの顔がとんでもなく赤くなっているが、夕焼けと同色で祐一が気づくはずもない。 「また会おうな、あゆ」 「うん。またね!」 ■後書き K:前後編に分けてみました。ノリにノったら長すぎで。 祐一:加筆で余計長い。てめーのはいつも長いだろが。 K:う゛、うぐぅ〜 あゆ:うぐぅ〜人の口癖とったよぅ〜うぐうぐ…… K:でもほらほらあゆちゃん、2人きりだよ♪ 祐一:お前がいるだろが。 K:うぐっ! で、でもほら黒子みたいなモンだし。舞台も用意しようか? (夕焼けの学校の教室をひっぱってくる。いつのまにか二人はガクランとセーラー服を着用している) あゆ:(ないすだよ!ばっちりだよ! これはもう教室で夜の課外授業に突入だよ!) (妄想中) 祐一:あゆ…この学校ともお別れだな… あゆ:この学校がダムの水底に沈んでも…祐一君は私といっしょに居てくれるよね? 祐一:うーん、水の底かぁ……(きぴーん★)……だったら俺はあゆの水の中がいいなぁ(ニヤリ) あゆ:? うぐ? 祐一:それはな、こぉこじゃーーーーい!(ル○ンダイブ) (妄想終了) あゆ:あぁん! もぅ〜! そんなにしたら溢れちゃうぅぅ〜 う、うぐうぐうぐうぐうぐ……うぐぅ〜!!(大歓喜) K「……祐一君が一人悶えしてたあゆをキチ○イでも見るような蔑んだ目で見た後去っていったのを話すべきかなぁ」 ■設定ベーシカル あゆに関してはゲーム同様謎を残しつつ進めたいので、秘密です♪という事で… 同じくラブラブです。 ■呪文 風系呪文 そのまま。空気と風の力を使う物。飛べたり浮いたり系。 天系の呪文でも類似系の呪文があります。 次回予告。 休みの日。 「えぅーこっちに来ないでですぅ〜」 少女を助けるのは主人公の役目。しないと話にならないし。 「私に妹なんていないわ」 ……まんまやん。 次回、風味入れます頑張れ目指せ15禁。 初稿:2002.06.18 再校:2002.09.29 誤字修正、他追加 三校:2003.07.26 修正 |