[0003] ぼーいみーつがーるそのにのいち:嵐の前の…【KanonSS:ろーかの】 (2002/06/14)
ろーかの。1 「ぼーいみーつがーるそのにのいち:嵐の前の…」 夢。 夢を見ている。 甘い夢。 白い雪に護られた世界。 冷たい筈なのに温かさすら感じる世界。 そんな甘い夢を見られた自分が嬉しかったし、同時に悲しくもあった。 ◆ どたどたと音がする。 (…るさ……) 何の音だろうか、止む気配はなく、声が聞こえた。 (………るさいな……) 「ないよー、おかぁさぁん〜」 (おかあさん?) 目をぱちりと開けると同時に覆っていた毛布が落ちる。 「……寒い」 寒さが現実を呼び寄せる。 (そっか……従姉妹……名雪の家……7年ぶりに連絡を入れて家に行くことになって…昨日は散々待たされたっけ…) (とすると、あの声は名雪か?) 朝から元気爆発しているような物音だが、声は眠りを誘うような弱々しい声だ。 (起きるか…) 装備を付ける。 服、という簡単なものは自分の人生には今までに必要だった事はなく、安全そうなこの家の中でも同じ事だ。 肉体に傷が付かないよう、強化かつ軽量化された黒いレザーの細身のズボン。 同じく強化されていると同時に魔法が施された同色のシャツに微妙な光沢を放つメイル。 目の肥えた人間であればそのメイルはかなり良い物であることが解る。 膝当てと肘当てを装着し、小袋を提げる。短めのダガーを数本ベルトに留める。 (家だからさすがにマントはまずいか」 どうやら頭の中での思考なのだが、ブツブツと声に出ている。 (背中に隙が出るが…仕方ない……それと) 肘先まで届く革手袋。 よく見るとこちらにも魔法がかけられている。 手袋に覆われた腕の膨らんだ部分を触る。 (確実に近づいている、時が) 薄暗いはずの室内だが、支度に不便はない。勿論全くの暗闇でも問題はないのだが。 光源の近くのカーテンを開ける。まばゆいばかりの白い光。 「…どうりで寒い訳だ」 深夜のうちにまた降り積もったらしい。 ひとりごちた後、部屋のドアを空けたところで、騒音の発生源が目の前にいた。 「あ、祐一♪ おはよぅ〜」 「ああ」 「ああ、じゃないよ、朝は『おはようございます』だよ」 「おはようございます、エリザベス」 「〜ぅう〜」 朝一番のギャグは従姉妹のお気に召さなかったらしい。 妙なうなり声をあげている。 「朝からバタバタしてるな名雪」 「あ、もしかして起こしちゃった? 寝ててもよかったのに」 「お前は今すぐにでも寝れそうな格好だな」 猫がちりばめられた半纏にパジャマ。髪はボサボサ、目は半目で本当に今にも眠りそうだ。 しかもちょっとした嫌みはザルのように無視されている。 「制服がないんだよぅ〜〜部活なのにぃ〜」 「征服?」 「字が違うおー」 会話の漢字違いを読みとらないで下さい、名雪さん。 「部長さんだから遅れたらいけないのに…」 「制服ってあの昨日着ていた奇妙な服の事か?」 「奇妙? …かわいいよー」 確かに世間一般ではあのような清楚さで上半身をカバーしているというのに、 ウエストラインの細さ、あの短いスカートに素肌の太股。あの微妙な靴下の長さは萌えだとは思うが。 戦場でしか生きてこなかった祐一には服とは装備の一部でしかなく、 可愛いとかいう一定の煩悩はあるものの、とりあえず防御力のなさが気になっている。 「あれなら昨日秋子さんが乾かしてくれたんじゃないのか?」 「ああ〜そうだおーおかぁさーん」 ぱたぱたと名雪が台所へ飛び込む。 「あらあら、学校はいいの?名雪」 「よくないよぅ〜私の制服は?」 「はい、名雪。あら祐一さん、お早う御座います、早いですね」 「お早う御座います、秋子さん。騒音が激しくて。この辺交通量多いんですかね。ばたばた、と」 「うぅ〜酷い事言ってるお〜」 「気のせいだ。ああ、美味しそうですね」 「朝食をどうぞ」 目の前のテーブルにのっているのはキラキラと光っている燦然とした朝食。 昨日『歓迎会』として出てきた夕食もそうだったが、超一流のザ・○ェフが涙を流しながら見そうだ。 味見などしたら土下座しつつ食べたに違いない。 今飲んでいるコーヒーですら、海原○山がよくわからない世界へ飛び立ってしまうにちがいない。 「私の朝ごはんは?」 「もう少し早く起きたらね」 「うー」 「名雪、それより部活とやらはいいのか?」 「よくないおーちこくだおー」 「どれぐらいなんだ? 学校までは」 「100メートルを3秒で走れば間に合うおー」 それは無茶でしょう、名雪さん。 「魔法使ったらどうだ?」 「魔法での登校は事故のもとだから校則違反なんだおー」 「ま、気を付けていけよ」 「がんばるおーいってくるおーお母さん、祐一」 ばたん。 「あの娘ももう少し早く起きてくれたらいいのに」 「名雪って朝弱いんですか?」 「そのうち祐一さんも大変になりますね」 「は? あ、しまった……周辺、案内してもらおうと思ったのに…」 まあいい。なんとかなるだろ。 ◆ 「名雪は学校に行ってるんですね」 「ええ、小さい街ですから、術別とかはなくて、総合的に教えている学校に通っていますよ。 義務ではないですが、行っておいた方が能力が伸びますし」 「はぁ……」 学校、という単語自体遠い世界だったものだから、おざなりな返事になってしまう。 行った事もないし、必要に感じたこともない。 生きていくのに必死であればどんな技術も覚えられるのだから。 弱い物から死んでいく世界なのだから。 「祐一さんも行くんですよ、学校」 「は?」 思いっきり間抜け面で秋子さんに返事してしまう。 「手続きもありますから、少々かかってしまいますが、大丈夫ですよ」 「…が、学校!?」 「はい、学校です」 「学校……ですか?」 学校というものが、自分に必要であるとは思えないのだが… 「基本を覚えたいのでしょう?」 ぎょっとした顔で叔母の顔を見つめてしまう。 「…な、んで……」 「私が最後にお会いした祐一さんは剣士としての訓練を初めておられました、 ですが今の祐一さんは剣士としての技量はなんとなく解りますが、剣を差しておられない。 と言うことは魔法の修行でもされるのかしら、と」 「お見通しって感じですね」 苦笑いを浮かべながらぽりぽりと頭をかく。 「祐一さんが亡くなられたというのが私も名雪も信じられなかったので、色々調べたんです。 まあご連絡いただけるまでは確証はなかったのですが……あれは……」 いつのまにか祐一の顔から笑顔が消えている。 すっと、指を秋子さんの唇にあてる。 「色々ご存じなんですね、秋子さん」 「え、あ、あの……え、ええ…………」 「俺が『厄災の子』であることもご存じなんですね?」 「ええ…」 「俺としては俺がここに居続けるのはお薦めできませんが」 「大丈夫ですよ」 何が大丈夫なのか。全然解らないし、根拠もなさそうであったが。 嬉しかった。 「……いても、いいんですか?」 「了承(0.01秒)」 「早いんですね」 「早いんです。…何かあったら遠慮なく言って下さいね、私達は家族なんですから」 「はい」 (できる限りの事をしよう、俺が居るのを許される限りは) すっと指が唇を離れる。 何事もなかったのように祐一は食事を続ける。 ほう、と小さな溜息をついて、下を向き、上目がちに食事に没頭する祐一を覗き見る。 顔が赤くなっているのは今祐一に見られたくはない。 耳まで真っ赤なはずだ。 しかも今の自分は頬がゆるんで笑っているに違いないから。 でも、生きて動いている彼を見続けたかった。 (いきて、おられたんですね。やはり) 強い意志を秘めた少年の瞳は成長しても相変わらず胸をときめかせた。 ……娘の想い人であるのを知っていても。 …変わらない思いは変えられなかった。 7年たっても。 ◆ 「これからどうするんですか祐一さん」 「名雪に街を案内してもらおうと思ったんですが、言うのを忘れてしまって」 「小さい街ですから、迷わないと思いますよ」 「……だといいんですが」 ちょっとした弱点、だと思っているので直したいのであるが、幼い頃から行ったことのない風景の方向感覚は読めないのだ。 ダンジョン等は一定の方向性や風の読み、出てくる魔物の気配で迷ったりはしないが。 「祐一さん、お出掛けでしたらこちらをお持ち下さい」 鈍い黄金色の細かい細工の指輪。見ただけでもかなり良いものだと解る。 「えーっと…これは?」 (これを売って生活費にしろとかか?儲けられそうだよなぁ」 旅を生業にしてるだけあってこういう鑑定には強い方なのだ。 「いいえ、違いますよ。第一祐一さんはここで暮らしますし」 「………もしかして」 「口に出されてましたよ♪」 「はう…」 諦めと共に生きるか、無駄な努力と共に生きるか。それが問題だ。 「何か困ったことがありましたら、この指輪に口付けをして『助けて〜秋子さ〜ん!』との○太調に言って下さいね♪」 (…てことは秋子さんがドラ○もん?) あまりに突飛過ぎて妙な所で変なツッコミを考える祐一。 「何もなければいいのですが…」 (本当は指輪も口付けも言葉も必要ないのですけど(『対祐一さん用反応』がありますし)、頼りになるのがいつしか愛に変わるかもしれませんし♪♪) 秋子さん、発言と考えが全然脈略ないですしかつ危険です。 「…心配して下さって、有り難うございます」 明子さんの心情など読みとれない祐一はぺこり、と礼をする。 「夕食までには帰ってきて下さいね」 「が、がんばります」 ■後書き K:どうも「祐一」と「秋子さん」が一発ででません。大変です。 「雄一」「晃子」の方が優先順位高いんです。 ちなみに「ろーかの。」は「ロールプレイング風味Kanon」からです。 名雪:予告に偽りあり、だね。学校のがの字も出なかったよ、祐一。 祐一:学校に行くらしいぞ、という発言は出たぞ。 第一俺のせいじゃない。Kの奴の予想ミスだ。個別に出したかったらしい。 K:だって、人物を先に何とかしたかったんだもん。秋子さんと名雪のダブルヒロイン説も捨てがたいけど。 名雪:で結局学校はどうなるの? K:不明(笑) 学校以外で会わせられる人間は会わせてしまう予定。そうすると一遍にキャラが出て混乱するのが避けられる。 出会い編はやはり一人ずつ豪華にしたいしね。 会わせたら学校編。 祐一:先を読まないで連載するのが相変わらず得意だな。おわらねーだろ、コレ(笑) K:人に読ませるための連載じゃないしね。自分を満足させるための作品だから、これは。 名雪:そうなの? K:そうなの。だから設定甘いのも発言おかしいのも許してもらおうという算段で。 ようやくアニメ見ながらちょいいじりつつ修正とかしたりして(笑) 祐一:自分の為の小説UPしてる段階で失格だろ?あいつまた呼ぼうか? さくっとやってもらおうぜ? ??:出番は無くても私のメリケンサックは血を求めているのよ… K:ぎえええええええっ! ■設定ベーシカル 基本的に、ゲームやアニメをまとめつつ、なぞってすすめつつ露骨に脱線していくファンタジー系SSです。 だれがヒロインというのは決めてません。出来ればハーレムエンド希望。 祐一ベーシカル設定としては。 ゲーム通り、前髪長めで。思った事を口に出したりとか。超鈍感なのにホスト体質とか(笑) 現時点では髪と目は琥珀(茶)、髪型はPCな感じで。長身痩躯(でも筋肉いい感じ)。 あと性格にちょっとエッチ風味入れます。どうもあのPC版だと18禁なイメージでないので。いい人すぎて。 ステータスとしては、顔イイ、頭イイ、性格やや(笑)イイ、運動イイ、のオールベスト形態で(笑) モテモテ(死語)です。主人公最強主義者なので、私。 『厄災の子』『記憶の混乱、欠損』『剣も使えるがどうやら魔法使えるらしい』とかがキーワード。 名雪に関しては、あの7年前の『雪ウサギ』事件はあった事にしてます。 祐一にラブラブ(死語)です。 秋子さんに関しては……ごめんなさい、ラブモード入りで進行します。 ショタ入っていると言われても否定できませんが、精神面で惚れているという事で。 ■呪文 現在の所:炎、水、風、土、鋼、天、魔、神、等がある。未定。 呪文、漢字に変えました。語学能力のない私としては漢字の方が格好いいのでは、という理由です。 熱華(ねっか): 系統:炎 レベル:中級加工 術者以外の氷系の物を高熱で気化させる呪文。 次回予告: 商店街で出会う運命の二人(響きだけはいい(笑)) 「関係ない人を巻き込みたくないからね」 「すっかり巻きこんどるだろが!」 …もう完成してます(笑) 初稿?:2002.06.14 再校 :2002.09.29 シチュ大幅誤り発見、修正。 三校 :2003.07.26 修正。 |